ラーメン店倒産46%増、「1,000円の壁」で値上げできない店が苦しい
2026年度上半期のラーメン店倒産は41件で前年同期比46.4%増と、飲食業で最も高い伸びだった。原価指数は5年で約1.4倍。値上げすると客が離れる1,000円前後の価格帯の店はどう判断すべきか、原価と損益分岐点から考える。

ラーメン店の倒産の増加率が、飲食業の主な業種のなかで最も高くなった。2026年度上半期(4〜9月)のラーメン店倒産は41件で、前年同期比46.4%増だった。東京商工リサーチが10月8日に公表した。同社は、値上げが客離れにつながり価格転嫁が難しいことを飲食業倒産の背景に挙げている。値上げすると客が離れやすい価格の節目に近い店ほど、原価高を値札に移しにくい。ランチ定食や居酒屋の客単価にも同じような節目があるとすれば、ラーメン店の数字は、価格を据え置いている他の業態の店にとっても他人事ではない。
ラーメン店の倒産増加率は飲食業で最も高い46.4%
東京商工リサーチの集計では、2026年度上半期の飲食業倒産は514件(前年同期比3.4%増)で、上半期として1997年以降の30年間で最多だった。業種別の増加率ではラーメン店が首位で、中華料理店、食堂・レストランが続く。
件数では食堂・レストランの110件、居酒屋の96件のほうが多い。ラーメン店は母数が小さく増加率が振れやすいが、食堂・レストランも3割近く増えており、増加はラーメン店だけの現象ではない。
増加は2026年に入って急に始まったわけではない。東京商工リサーチの2025年度(2025年4月〜2026年3月)の集計では、ラーメン店倒産は57件で、前年度比21.2%増だった。その後も2026年1〜6月は36件(前年同期比44.4%増、2009年以降の上半期で最多)、4〜9月は41件と、同社の集計では前年を上回る状態が続いている。
原価が上がっても値上げできない小さな店から倒れている
原価の上昇幅は大きい。帝国データバンクのラーメン原価指数は豚骨ベース・東京都区部の値だ。2020年平均を100として、2025年に141となった。5年で約1.4倍の計算になる。
東京商工リサーチは2026年10月8日の発表で、小・零細規模の飲食業ほど「食材や光熱費、人件費などのコストアップが負担」になっていると指摘した。10月以降は最低賃金の引き上げで人件費がさらに上がるとし、客足に響く値上げを容易にできず価格転嫁が遅れる小・零細規模の飲食業の動向に注目している。
- 物価高倒産
- 79件
- 人手不足倒産
- 41件
- 負債1億円未満
- 456件
前年同期比23.4%増
前年同期比57.6%増
飲食業倒産の88.7%
物価高倒産と人手不足倒産は、販売不振などの原因別とは別の切り口で数えた件数で、内訳として足し合わせるものではない。いずれも前年同期より増えており、コストの上昇が倒産の増加と重なっていることがわかる。倒れているのは規模の小さい店が中心で、飲食業倒産の9割近くが負債1億円未満だった。ラーメン店に限っても、2026年1〜6月の倒産36件のうち31件(構成比86.1%)が負債1億円未満で、1件あたりの負債は4,100万円だった。
値上げを先送りした期間の赤字は、運転資金を取り崩して埋めることになりやすい。手元資金の薄い小さな店ほど、価格を据え置ける期間は短いとみられる。
1,000円前後の標準価格帯ほど値上げの余地が小さい
帝国データバンクは2026年7月の発表で、ラーメンの価格が500円前後の低価格帯、1,000円前後の標準価格帯、1,500円以上の高価格帯に分かれつつあると分析した。このうち標準価格帯は、値上げすると客足や収益が落ちるリスクがあるとしている。同社が「1000円の壁」と呼ぶのはこの節目だ。東京商工リサーチも2026年1〜6月の集計で、ラーメンの価格が1,000円を超えることは珍しくなくなったと記している。
売上高では過去最高だが、利益は半減した。帝国データバンクによると、ラーメン店市場(事業者売上高ベース)は2025年度見込みで8,855億円と過去最高になる。一方、純損益の合計(判明分)は前年度の356億円から171億円にほぼ半減した。増収となった店の割合も38.8%で、2023年度の56.3%から2年連続で下がった。同社は、原材料高を背景に値上げした結果、地元の固定客を中心に集客の維持に苦戦した店もあったとしている。
市場の売上の伸びが、個々の店の客数を支えているとは限らない。中間の価格帯の店が、安さでも価格に見合う付加価値でも選ばれにくくなっているのであれば、原価高を吸収しきれずに苦しくなるおそれがある。
壁を越えるか、中身を組み替えるかは原価と損益分岐点で決める
価格の節目に近い店が取れる道は、大きく分けて2つある。節目を越えて値上げし、価格に見合う価値を示して高価格帯に移るか、価格を据え置いたまま量・構成・セットを組み替えて客単価と原価を調整するかだ。どちらを選ぶかの判断材料は次の3点になる。
- 主力メニューの原価率が、1年前と比べてどれだけ上がったか
- 10月以降の最低賃金の引き上げを織り込んだ人件費で、損益分岐点の売上がいくらになるか
- 値上げした場合に、客数が何%減っても今の利益を保てるか
原価率の上昇が小さく、損益分岐点に余裕があるなら、組み替えで当面をしのげる。原価率の上昇が大きく、据え置いたままでは赤字が続く場合の分かれ目は、値上げ後の客数の減り方が損益分岐点の範囲に収まるかどうかだ。収まる見込みなら、運転資金に余裕があるうちに早めに値上げしておけば、客の反応を見て量や構成を直す余裕が残る。収まらない見込みなら、量や具材などの上積みがないままの値上げは、客離れを早めるおそれがある。その場合は、トッピングや限定メニューで価値を足してから価格を上げる順番を考えたい。今後は、東京商工リサーチが公表する飲食業倒産の件数と、そのうち物価高倒産の伸び、帝国データバンクのラーメン原価指数の動きが、値上げのタイミングを測る目安になる。資金繰りの支援制度を使う場合は、公募要領や専門家に確認したい。
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