最低賃金1,177円、都道府県別の額と発効日 飲食店調査で52.4%が影響大
2026年度の最低賃金は全国加重平均56円増の1,177円。発効は10月1日〜12月2日で、京都府や沖縄県など10府県は11月以降だ。飲食店調査では影響が大きいとした店が52.4%。全47都道府県の額と発効日を示す。

2026年度の最低賃金は全国加重平均で56円上がり、1,177円になった。発効日は都道府県によって10月1日から12月2日まで分かれ、京都府や沖縄県など10府県は11月以降にずれ込む。シンクロ・フードが飲食店に聞いた調査では、改定前の最も低い時給が最低賃金と同額か、10〜49円上乗せだった店が51.0%あった。上げ幅はどの県でも54円以上あるため、こうした店は時給を上げなければ新しい最低賃金を下回る。月100時間働くアルバイト1人で月5,400〜6,500円の負担増となり、回答店の52.4%が経営への影響は大きいと答えた。
上げ幅56円は過去2番目、平均を超えるのは7都府県だけ
厚生労働省の一覧では、全国加重平均は1,121円から56円上がった。率にすると5.0%だ。労働政策研究・研修機構によると、前年度に次ぐ上げ幅だ。前年度は過去最高の66円だった。今回は中央最低賃金審議会の目安(55円)を1円上回った。目安どおりは東京都など14都道府県で、33府県が目安を上回った。
上げ幅は東京・神奈川・大阪の54円が最も小さく、佐賀の65円が最も大きい。60円以上上がったのは青森、高知、鹿児島、沖縄など14県にのぼる。改定前の額が低い県ほど上昇率が高い。改定前1,023円の高知・宮崎・沖縄は6.1〜6.2%、1,226円の東京は4.4%だ。中央最低賃金審議会の目安は、東京・神奈川・大阪などのAランクが54円、B・Cランクが56円だった。同機構によると、最低額の宮崎県(1,085円)は最高額の東京都(1,280円)の84.8%となり、この比率は12年連続で上がった。
全国加重平均の1,177円を上回るのは、埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・京都・大阪の7都府県だけだ。残る40道府県は平均を下回り、うち18県は1,100円未満にとどまる。報道で目にする「1,177円」は自店の基準にはならず、人件費の見積もりには店のある県の額と上げ幅を使う必要がある。
発効日は10月1日〜12月2日、10府県は11月以降
一覧によると、10月に発効するのは37都道府県、11月が7府県、12月が3県だ。10月1日に発効したのは東京や大阪など15都道府県にとどまる。
10月15日以降に発効するのは次の18府県だ。10月中は静岡(15日)、福島(16日)、茨城(18日)、宮崎(24日)、鹿児島(25日)、青森・高知(29日)、山形(30日)が切り替わる。11月は山梨・徳島・愛媛・大分(1日)、長崎(2日)、佐賀(15日)、京都(16日)、12月は岩手・熊本(1日)、沖縄(2日)が続く。複数の県に店があれば、県ごとに切り替え日が違う前提で給与設定を管理することになる。
表は全47都道府県を地方ごとに並べた。改定後の額は、全国加重平均の1,177円より高い都道府県を橙、低い都道府県を青で色分けしている。
色:1,177より高いほど濃い橙、低いほど濃い青
| 都道府県 | 改定後の額 | 引上げ額 | 発効日 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 1,131円 | 56円 | 10月1日 |
| 青森 | 1,090円 | 61円 | 10月29日 |
| 岩手 | 1,090円 | 59円 | 12月1日 |
| 宮城 | 1,098円 | 60円 | 10月1日 |
| 秋田 | 1,090円 | 59円 | 10月14日 |
| 山形 | 1,092円 | 60円 | 10月30日 |
| 福島 | 1,094円 | 61円 | 10月16日 |
| 茨城 | 1,136円 | 62円 | 10月18日 |
| 栃木 | 1,125円 | 57円 | 10月1日 |
| 群馬 | 1,120円 | 57円 | 10月3日 |
| 埼玉 | 1,196円 | 55円 | 10月1日 |
| 千葉 | 1,195円 | 55円 | 10月1日 |
| 東京 | 1,280円 | 54円 | 10月1日 |
| 神奈川 | 1,279円 | 54円 | 10月1日 |
| 新潟 | 1,108円 | 58円 | 10月1日 |
| 富山 | 1,119円 |
人件費の増加額は、上げ幅に勤務時間と人数を掛ければ見積もれる。月100時間働くパート・アルバイト1人あたりでは、上げ幅54円の東京・大阪で月5,400円の増加だ。56円の北海道は月5,600円、65円の佐賀は月6,500円になる。給与の締め日の途中で発効する県では、発効日の前後で時給を分けて計算するため、計算方法は給与計算の担当者や社会保険労務士に確かめておくと安全だ。
回答店の半数は時給が最低賃金に近く、改定分の上げが避けられない
シンクロ・フードは2026年9月10日〜14日、飲食店ドットコム会員の経営者・運営者にネット調査を行い、235件の回答を得た。同社の発表によると、1店舗運営が62.6%、首都圏が63.0%を占める。飲食店全体の平均とは限らない点は割り引いて読む必要がある。
改定前の最も低い時給は「最低賃金と同額」が28.9%、「10〜49円上乗せ」が22.1%で、合わせて51.0%だった。今回の上げ幅は全都道府県で54円以上のため、この層は改定に合わせて時給を上げることになる。「50〜99円上乗せ」の17.9%も、上乗せが店のある県の上げ幅(54〜65円)より小さければ、時給を上げないと新しい最低賃金を下回る。
経営への影響は「やや影響が大きく、追加の施策が必要」が37.9%、「非常に影響が大きく、経営継続が危ぶまれる」が14.5%で、合わせて52.4%に達した。上げ幅を「想定より高かった」とした店は43.0%だった。同社の2025年調査の35.8%から増えている。DXマガジンによると、懸念には利益の圧迫、価格転嫁の難しさ、既存スタッフの昇給への波及が挙がった。
改定後の方針は「引き上げ額分をそのまま上げる」が47.2%で最も多く、「すでに上回るため据え置く」は35.3%だった。継続的な賃上げへの対策は「既に実施」が12.8%、「実施していないが考えている」が43.4%で、実施・検討中の店の84.8%が値上げを挙げた。仕入先の見直し33.3%、営業時間の変更28.8%、店主自身が働いて必要人数を減らす22.0%が続く。
発効日前に、既存スタッフとの時給差と時間帯の人員配置を決めておく
最初に押さえるのは、発効日以降の勤務で新しい最低賃金を下回る時給が残らないかだ。基本の時給だけでなく、時間帯や職種ごとに設定した時給も対象になる。同じ調査では、時給を見直す時期を「不定期」とする店が54.9%、「毎年10月」は24.3%だった。決まった見直し時期がない店ほど、県の発効日を起点に確認の日を決めておくと漏れを防ぎやすい。
次の判断は、既存スタッフとの時給差の扱いだ。新人の時給だけが上がると、経験のあるスタッフとの差が縮まる。差を保つなら、人件費の増加は上の見積もりより大きくなり、値上げや営業時間の見直しで吸収する幅も広がる。
吸収の手段を選ぶには、時間帯ごとの売上と人員配置を並べるのが近道だ。客数の少ない時間帯の配置を減らせるか、営業時間を短くできるか、メニュー価格に転嫁できるかを、売上への影響が小さい順に比べることになる。
同じ調査で、2030年の全国加重平均を「1,500円を超える」と予想した店は33.2%、「1,500円と同等」は26.0%で、合わせて59.2%だった。毎年50円台以上の改定が続けば、人件費の増加を一度きりの対応で吸収するのは難しくなる。来年夏に示される目安の上げ幅と、自店の人件費率を並べて見ておけば、値上げや営業時間の見直しを発効日に間に合わせやすい。
出典
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