値上げは粗利を多く削る品から、客数の反応は品目別に測る
2026年8月の外食は客単価102.3%、客数102.6%と伸びたが、ファミレス和風は客数が前年並みで、協会は過去の値上げと天候不順を挙げた。粗利を多く削る品から改定し、看板商品を分けて客数の反応を測る手順と表示の決まりを示す。

2026年8月の外食は、客単価が前年同月比2.3%上がる一方で、客数も2.6%増えた(日本フードサービス協会 外食産業市場動向調査、全店・税抜)。値上げが続いても、業界全体では客は離れていない。ただファミリーレストランの和風は客数が前年並みにとどまり、店舗数が2.0%増えたことを踏まえると、1店あたりの客数は減った計算になる。協会はその理由に「過去の値上げに伴う客数の伸び悩み」と天候不順の影響を挙げた。業界平均が良くても、自店の客数が同じように動くとは限らない。全品を一度に上げる代わりに、原価の上昇で店全体の粗利を多く削っている品目から順に改定し、看板商品は時期をずらす方法がある。利益を確保しながら、客数が動いたときに原因の品目を見分けやすくなる。
客単価の伸びと客数の動きは業態で分かれた
8月の外食全体は売上高104.9%、客数102.6%、客単価102.3%だった(会員229社、36,982店舗)。同月の総務省統計局 消費者物価指数でも外食は前年同月比2.1%上がっており、価格の上昇は続いている。
色:100より高いほど濃い橙、低いほど濃い青
| 業態 | 客数 | 客単価 |
|---|---|---|
| 外食全体 | 102.6% | 102.3% |
| ファミリーレストラン 洋風 | 101.3% | 104.1% |
| ファミリーレストラン 和風 | 100.0% | 102.0% |
| ファーストフード 麺類 | 100.9% | 104.0% |
| ファーストフード 持ち帰り米飯/回転寿司 | 99.9% | 100.7% |
| パブ/居酒屋 居酒屋 | 100.5% | 100.7% |
| 喫茶(計) | 99.1% | 105.6% |
表の客単価は客1人あたりの売上の前年比で、メニュー価格の改定率ではない。
差が出たのは客数だ。ファミリーレストランの洋風は客単価が104.1%と大きく伸び、客数も101.3%と増えた。協会によると、洋風では低価格業態が引き続き客を集め、人気アニメとのコラボやクーポン配布も効いた。一方の和風は客単価102.0%で、客数は100.0%にとどまった。協会は和風について、過去の値上げに加えて天候不順の影響も挙げており、8月は中下旬の台風や局地的大雨で月後半の客足が落ちた。客数の動きは客単価の伸びだけでなく、販促や天候でも変わる。業態平均をそのまま自店に当てはめることはできない。
上げ幅を決めるときは、自店の原価に加え、近くの競合の価格や販促との位置関係も材料になる。2025年の年間結果報告で協会は、消費者の節約志向が強まり、割引キャンペーンや値上げを行わない企業、相対的に価格の安いファーストフードの好調が続いたと記している。近くに安い店や割引の多い店があれば、同じ上げ幅でも客の受け止め方は変わりうる。
改定は粗利を多く削る品から、看板商品は時期をずらす
全品一律に上げるより、原価の上昇で店全体の粗利を多く削っている品目から順に改定する方が、利益と客数の両方を管理しやすい。ここでいう粗利は、販売価格から食材原価を引いた額だ。価格が同じなら原価が上がった分だけ1品の粗利は減り、その品が多く売れるほど店全体の粗利の減りも大きくなる。
- 看板商品を分ける来店のきっかけになっている品目を、ほかの品目と分けて扱う
- 粗利の減り方を測る原価の上昇額に販売数を掛け、店全体の粗利をどれだけ削っているかで並べる
- 粗利を多く削る品から改定する店全体の粗利の減りが大きい品目から上げ、看板商品は時期か上げ幅を別に決める
- 表示を整える税込価格で示し、旧価格を並べるなら販売期間を添える
- 改定前後を比べる来店客数、客単価、粗利額、品目別の販売数を前年同月と並べる
順番を決めるのは、1品の粗利の薄さではなく、店全体の粗利をどれだけ削っているかだ。原価が大きく上がった品でも、販売数が少なければ店全体への影響は小さい。逆に1品あたりの上昇額が小さくても、よく売れる品は店全体の粗利を大きく削る。原価の上昇額に販売数を掛けた額で並べると、手を付ける順番が決まる。
看板商品が来店のきっかけになっている店ほど、その価格は客数に響きやすいと考えられる。ほかの品目と同時に上げると、改定後に客数が減っても、どの値上げが響いたのかを分けられない。看板商品は改定の時期をずらすか、上げ幅を別に決めておくと、反応を品目ごとに読める。原価の上昇が小さく粗利に余裕のある品目は、据え置いて店全体の利益を支える選択肢もある。
新価格は税込で示し、旧価格を並べるなら販売期間を添える
メニューを刷り直すときは、価格の示し方に決まりがある。消費者庁 表示に関するQ&Aによると、消費税法は商品の価格を表示する際に税込価格の表示を義務付けている。税込か否かを示さずに税抜価格だけを示すと、税込価格と誤認されるおそれがあり、不当表示に当たるおそれもある。
改定前の価格を並べて示す場合は、消費者庁 二重価格表示のページが判断の目安になる。同ページは、価格表示ガイドラインに沿った考え方を次のように示している。
個別の表示が問題ないかは、消費者庁の価格表示ガイドラインや専門家に確認しておくと、刷り直し後の差し替えを避けられる。
値上げ後は客数・客単価・品目販売数を分けて見る
改定の成否は、売上や客単価の1つの数字では判断できない。客単価が上がっても、客数の減り方によっては売上が減る。逆に、客数が減っても売上が伸びることがある。8月の喫茶(計)は客数99.1%と前年を下回ったが、客単価105.6%で売上は104.7%と伸びた。
店で記録したいのは、来店客数、客単価、売上、粗利額の店全体の4つと、品目別の販売数だ。改定した品目と据え置いた品目の販売数を前年同月など同じ期間で並べると、値上げした品だけ注文が減ったのか、来店そのものが減ったのかを分けやすい。1人が複数品を頼むため、品目の販売数と来店客数は一致しない。天候や曜日、営業時間の違いも記録に残し、1週間の動きだけで効果を決めない。協会の数字は新店を含む全店の集計なので、自店と比べるときは店舗数の増減の差も残る。
次の改定を決める材料は、業態平均より上か下かではなく、自店の粗利額と来店客数、品目販売数の組み合わせだ。粗利額が増え、来店客数が前年並みなら、残りの品目や看板商品の改定に進む余地がある。来店客数が落ち、据え置いた品目の販売数まで減っているなら、店全体の価格の印象が客足に響いている可能性があり、看板商品の改定を見送る判断もありうる。協会が毎月出す業態別の客数は、自店の動きが業界の流れか自店固有かを見分ける目安になる。
出典
この記事に関連するサービス
一覧を見る関連記事

松屋は牛めしを20円上げ、同じ日に790円の定食を定番にした
松屋フーズは2026年10月13日、牛めし並盛を480円に上げ、同じ時刻に790円からの「たっぷり牛皿定食」を定番化した。客単価が4か月前年割れのなか、看板は小幅に上げて上の価格帯を厚くした形で、個人店が値上げで見る数字を示す。

葉物高は10月も続く見通し キャベツも後半やや高く、値上げ前の手順
9月28日の週の小売価格は平年比でレタス150%、キャベツ143%。農水省は10月もレタス・はくさいが月を通じて平年を上回り、キャベツも後半はやや上回るとみる。値上げの前に歩留まりと付け合わせを見直したい。

ラーメン店倒産46%増、「1,000円の壁」で値上げできない店が苦しい
2026年度上半期のラーメン店倒産は41件で前年同期比46.4%増と、飲食業で最も高い伸びだった。原価指数は5年で約1.4倍。値上げすると客が離れる1,000円前後の価格帯の店はどう判断すべきか、原価と損益分岐点から考える。