飲食・宿泊の社員の離職率は全産業の1.9倍、時給の前に見直す3点
宿泊業,飲食サービス業の一般労働者(パート以外)の離職率は2025年に21.5%で、全産業の約1.9倍、前年からも上がった。転職者の辞めた理由と現場のnoteから、時給の前に見直せる教え方、欠勤の扱い、理由の記録を整理する。

飲食店と宿泊業をまとめた「宿泊業,飲食サービス業」で、パート以外の一般労働者の2025年の離職率は21.5%だった。全産業の11.4%の約1.9倍で、前年の18.1%からも上がっている(厚生労働省「雇用動向調査」、2026年8月31日公表)。一方、転職者が前職を辞めた理由では、労働条件と人間関係を合わせた割合が収入を上回る。これらの理由で辞める人には、時給を上げるだけでは効きにくいとみられる。時給の前に見直せるのは、最初の3か月の教え方、急な欠勤の扱い、辞めた理由の記録と面談の3点だ。
飲食・宿泊の社員の離職率は全産業の1.9倍、前年より上昇
厚生労働省の報道発表資料によると、宿泊業,飲食サービス業の離職率は一般労働者で21.5%、パートタイム労働者で25.0%だった。全産業はそれぞれ11.4%、19.9%で、どちらの働き方でも飲食を含む業種の方が高い。1.9倍は一般労働者どうしの比で、パートを含む業種全体の離職率でも23.7%と、全産業の13.7%の約1.7倍になる(同調査の概況)。
前年の2024年は一般労働者が18.1%、パートが29.9%だった(厚生労働省 令和6年調査)。引き算すると、一般労働者は3.4ポイント上がり、パートは4.9ポイント下がった。離職はパートだけの問題ではなく、社員を含む一般労働者の定着も対策の対象になる。この業種の離職者は1年で104万2700人で、医療,福祉、卸売業,小売業に次ぐ3番目に多い。
辞めた理由は、労働条件と人間関係を合わせると収入を上回る
同調査の概況は、転職して新しい職場に入った人に前職を辞めた理由を聞いている。全産業の数字だが、店が手を打てる項目が並ぶ。女性は「その他の個人的理由」23.8%を除くと、労働条件が悪かった12.9%が最も多く、人間関係が好ましくなかった11.5%が続く。男性は「その他」の理由と定年・契約期間の満了を除くと、給料等収入が少なかった9.9%が最も多い。
色:列の中で数字が大きいほど濃い青
| 理由 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 給料等収入が少なかった | 9.9% | 8.6% |
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 8.5% | 12.9% |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | 8.9% | 11.5% |
| 会社の将来が不安だった | 6.9% | 4.3% |
| 仕事の内容に興味を持てなかった | 5.2% | 4.6% |
| 能力・個性・資格を生かせなかった | 5.2% | 3.9% |
この表は理由不詳を含めて合計100%になる構成比で、理由どうしを足せる。労働条件と人間関係を合わせると、女性は24.4%で収入8.6%の約2.8倍、男性は17.4%で収入9.9%の約1.8倍になる。辞める人の多くは、収入以外の理由を挙げている。時給を上げれば収入を理由に辞める人は減らせるかもしれないが、休みの取りにくさや職場の雰囲気で辞める人には効きにくいとみられる。自店で辞めた人がどの理由に当たるかを分けて記録すれば、次に直す点が決まる。
新人の最初の3か月は、教える順番と手空き作業を決めておく
厨房で約4年働くパートのnote(2026年10月8日公開)は、地域では「まあまあ良い時給」なのに、新人が早ければ1日、長くても3か月で辞めると書く。筆者が挙げるのは、裏口の入り方やシフトの出し方、打刻、身だしなみを最初に教えないこと、作業のあとに確認や一言がないことだ。覚えていないうちに速さを求め、約3か月で一人に任せる運用も挙げている。一人の体験だが、どれも店側が決めれば変えられる点である。
大手チェーンを経て飲食店を経営してきた筆者のnote(同日公開)は、新人が「何をしてよいか分からない時間」を作らないことを勧める。手空き作業の一覧と定期作業のチェック表を用意し、作業は2〜3個まとめて渡すと、本人が段取りを考えられるという。自分で気づいて動けたら、その場で評価を伝える。一覧があれば、教える先輩が忙しい時間帯でも新人が手を止めずに済む。
急な欠勤の代役探しは、新人ではなく店長が引き受ける
先の厨房パートのnoteは、熱がある人に代役を自分で探させる運用を問題にし、代役を探すのは店長の仕事だとする。転職者の理由で女性の最多だった労働条件には、こうした休みの取りにくさも含まれうる。決めておきたいのは、希望休の締切と確定の時期、急な欠勤の連絡先と代役手配の担当、新人の勤務を教える人のシフトと重ねるかどうかの3つだ。
辞めた理由を記録し、面談で一人ずつ求めるものを聞く
店長教育を手がける髙井将也氏のnote(同日公開)は、辞めた理由を振り返り、職場環境が原因なら経営側の問題として見直すべきだとする。スタッフが求めるものは収入、技術の習得、勤務時間の融通など人によって違うため、一対一の面談で具体的に聞くことを勧める。統計の理由が全産業の平均である以上、自店で多い理由は記録しないとつかめない。
- 入店前に、店長が新人の最初の3か月を決める初日に教える項目、教える担当者、手空き作業の一覧を、採用が決まった時点で用意する
- シフトを組む前に、店長が欠勤の扱いを決める希望休の締切と確定日、急な欠勤の連絡先、代役を誰が探すかを全員に伝える
- 辞める人が出たら、その週のうちに理由を残す収入・労働条件・人間関係などに分けて記録し、在籍者とは定期的に一対一で話す
判断の目安になるのは、自店で入店から3か月以内に辞めた人の割合と、その理由の内訳だ。労働条件や人間関係が多ければ、時給を上げる前に教え方と休みの運用を直す方が、少ない費用で効く可能性がある。収入の理由が多く、近隣の求人より時給が低いなら、賃上げを先に検討する。業種全体の動きは、2026年分の雇用動向調査で一般労働者の離職率が下がるかで確かめられる。
出典
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