宿泊・飲食の時給、2年の最低賃金上げで余裕が消える県 47都道府県試算
2025年6月の宿泊業,飲食サービス業の短時間労働者の時給を2026年度の最低賃金と比べると、5県で差が0円以下、14都道府県で20円以内になる。47都道府県の試算と、店が賃金表を見直す判断の基準を示す。

宿泊業,飲食サービス業で働くパート・アルバイトの2025年6月の平均時給が据え置かれたままなら、4県で2026年度の最低賃金を下回り、新潟は同額になる計算だ。COVERSの試算では、青森・岩手・福島・新潟・岡山で差が0円以下となり、20円以内まで広げると14都道府県に上る。2025年6月時点では全都道府県で最低賃金を101円以上上回っていた。地域の平均並みの時給を払ってきた店でも、2026年度額の発効日を境に賃金表を組み直す必要が出てくる。
最低賃金は2年で122円上昇、時給据え置きなら余裕は中央値33円
厚生労働省の地域別最低賃金の全国一覧によると、2026年度の地域別最低賃金は全国加重平均で1,177円となった。2024年度の1,055円から2年で122円上がる。発効日は都道府県ごとに2026年10月1日から12月2日までずれる。間の2025年度は1,121円だった。
比べた時給は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年、2025年6月分)だ。短時間労働者の1時間当たり所定内給与額で、企業規模10人以上・男女計の値をとった。産業は「宿泊業,飲食サービス業」で、宿泊業を含む実際の支払額である。全国では1,234円だった。
- 2024年度額との差の中央値
- 161円
- 2026年度額との差の中央値
- 33円
- 2026年度額との差が0円以下
- 5県
- 2026年度額との差が20円以内
- 14都道府県
2025年6月時点
2025年6月の時給のままとした試算
青森・岩手・福島・新潟・岡山
0円以下の5県を含む
2025年6月に適用されていた2024年度の最低賃金と比べると、都道府県別の上積みは中央値で161円あった。同じ時給を2026年度額と比べると、中央値は33円まで縮む。店側から見れば、2025年6月時点で最低賃金を中央値161円上回っていた時給が、据え置けば新額とほぼ並ぶということだ。全国値どうしは集計の重みが異なるため、そのままは比べられない。
余裕が消えるのは東北・四国・九州など、元の上積みが薄い県
差が20円以内の14都道府県には、岩手・青森・福島・秋田の東北、岡山、香川・徳島・高知の四国、宮崎・佐賀の九州などが並ぶ。これらの県は2025年6月時点の上積みが101〜153円と、もともと薄かった。埼玉・栃木も含まれる。
2年間の最低賃金の上げ幅は47都道府県の中央値で123円と、県による差は比較的小さい。14都道府県の上げ幅は埼玉の118円から福島の139円まで幅があり、共通するのは出発点の上積みが薄かったことの方だ。2025年度額と比べた段階では全県で時給が最低賃金を上回っていた(最小は岩手の22円)が、2026年度額では4県が下回り、新潟は同額になる計算だ。
色:0より高いほど濃い橙、低いほど濃い青
| 都道府県 | 2025年6月の時給(円) | 2024年度額との差(円) | 2026年度最低賃金(円) | 2026年度額との差(円・試算) | 2026年度額の発効日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 岩手 | 1,053 | 101 | 1,090 | -37 | 12月1日 |
| 青森 | 1,060 | 107 | 1,090 | -30 | 10月29日 |
| 岡山 | 1,102 | 120 | 1,104 | -2 | 10月2日 |
| 福島 | 1,092 | 137 | 1,094 | -2 | 10月16日 |
| 新潟 | 1,108 | 123 | 1,108 | 0 | 10月1日 |
| 和歌山 | 1,102 | 122 | 1,101 | 1 | 10月3日 |
| 宮崎 | 1,089 | 137 | 1,085 | 4 | 10月24日 |
| 高知 | 1,092 | 140 | 1,086 | 6 | 10月29日 |
| 香川 | 1,099 | 129 | 1,092 | 7 | 10月1日 |
| 秋田 | 1,100 | 149 | 1,090 | 10 | 10月14日 |
| 徳島 | 1,116 | 136 | 1,103 | 13 | 11月1日 |
| 佐賀 | 1,109 | 153 | 1,095 | 14 |
上積みが最も厚い石川(231円)や東京(203円)でも、2026年度額との差は102円と86円で、半分以下に縮む。表の差は、2025年6月の時給が据え置かれた場合の試算だ。自店の今の時給を表の統計値と並べれば、地域の平均より高いか低いかという位置もわかる。
自店の判断は、県の新額と発効日に対する差で分かれる
判断の基準になるのは、自店の時給と、自店のある県の2026年度最低賃金との差だ。発効日以降は新額以上の支払いが求められ、発効日は県ごとに異なる。
DXマガジンによると、シンクロ・フードが飲食店ドットコム会員に2026年9月10〜14日に行った調査(回答235件)では、改定前の時給は「最低賃金と同額」が28.9%で最多だった。見直し方針は引き上げ額分をそのまま反映する予定が47.2%で、据え置きは35.3%だった。同記事は、既存スタッフとの賃金バランスを保つための玉突き昇給も示されたと書く。最低賃金と同額の店が約3割あり、こうした店は発効日に合わせた改定が避けられず、その分を既存スタッフにどこまで広げるかが人件費を左右する。
募集時給の相場も判断材料になる。マイナビキャリアリサーチLabの2026年7月度レポートによると、求人サイト「マイナビバイト」の[飲食・フード]の全国平均時給は1,211円で、前年同月より40円高く、調査開始以来の最高額だった。三大都市圏では1,246円だ。求人広告の集計なので、実際の支払額である賃金構造基本統計調査の1,234円とは直接比べられない。
自店の時給が新額を下回る、または差が20円ほどしかない店は、新人だけでなく既存スタッフを含めた賃金表全体の見直しが先になる。差に余裕がある店は、据え置くか、近隣の求人と比べて募集時給が見劣りしないかで判断が分かれる。いずれも、引き上げ後の人件費を売上と比べ、客単価やシフトで吸収できるかを見積もっておきたい。個別の適用は労働局や専門家に確認するとよい。
次に注目するのは、2026年6月分を集計する令和8年の賃金構造基本統計調査だ。前回の令和7年調査はe-Statで2026年3月24日に公開された。公表されれば、2025年度改定後の時給の上積みを県ごとに測り直せる。
出典
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