居抜き物件は契約前に4点を書面で確かめる リース残と原状回復
居抜き物件は、譲り受けた厨房機器がリース品だったり、退去時に前の店の設備まで撤去を求められたりすると割高になる。設備の所有者、リース残の負担者、貸主の承諾条件、原状回復の範囲を契約前に書面で確かめ、総額で比べる手順を示す。

居抜き物件は内装や厨房機器を引き継げる分、開業費を抑えられる。ただし、譲り受けたつもりの冷蔵庫がリース会社の物だったり、退去時に前の店の配管まで戻すよう求められたりすれば、安く見えた物件が高くつく。契約前に書面でそろえたいのは、設備の所有者、リース残を払う人、原状回復の範囲、貸主の承諾条件の4つだ。この4つがそろわないうちは、造作の値段を比べても判断の材料にならない。
厨房機器は購入品かリース品かで、引き継げる範囲が変わる
最初に確かめるのは、残っている設備が誰の物かだ。飲食店ドットコムによると、造作買取では出店者が所有権を持ち、造作譲渡契約や資産譲渡契約を別に結ぶ。リースでは内部造作・設備の所有権はリース会社にあり、出店者は所有しない。
造作買取(購入品)
- 所有権は出店者にある
- 造作譲渡契約・資産譲渡契約を別に結ぶ
- 退去時に売却して移転・撤退の選択肢を持てる
リース品
- 所有権はリース会社にあり、出店者は持たない
- ファイナンス・リースは中途解約が基本的に認められない
- 合意解約では残リース料相当額を一括で払う
- 前の店のリース残の処理で、使える設備が変わる
所有者がわかれば、譲渡の対象にできる設備とできない設備が分かれる。リース品は前の店に売る権限がないため、譲渡の一覧に入っていても値段の根拠にはならない。設備名・型番・製造年・動作状態と、購入品かリース品かを一行ずつ書いた一覧を前の店から受け取っておくと、後の交渉の土台になる。
リース残を誰が払うかで、開業時の設備費が変わる
リース品の扱いは金額が大きくなりやすい。リース事業協会によると、ファイナンス・リースは期間中の中途解約が基本的に認められない。合意で解約する場合、借り手は残リース料か、それに相当する違約金を一括で払う。国税庁のタックスアンサーも、税務上のリース取引の要件に、中途解約の禁止か、未経過分のリース料のおおむね全部(原則90%以上)の支払いを挙げる。
つまり前の店が閉店しても、リース契約は残る。飲食店ドットコムも、売る側にリース残がある場合は、その処理の仕方で厨房の使い方が変わるため事前の確認が要るとする。残リース料を前の店が払い続けるのか、自店が引き継ぐのか、返却して自前で買い直すのかで、開業時の設備投資額が変わる。誰が払うかは口頭で済ませず、前の店とリース会社の双方に確かめて書面に残したい。
貸主の承諾がなければ、譲渡の話は前に進まない
居抜きでは、建物の賃貸借契約と設備の譲渡契約が別々に動く。前の店と設備の値段で合意しても、建物を借りられなければ意味がない。民法612条は、賃借人が貸主の承諾なく賃借権を譲り渡すことを禁じ、違反すれば貸主が契約を解除できると定める。
前の店から賃借権を引き継ぐ形か、貸主と新たに契約する形かで、手続きも契約条件も変わる。貸主が何を条件に承諾するかは、設備の交渉より先に聞いておきたい。
退去時の撤去範囲は、原状回復条項で決まる
居抜きの費用は入居時だけでは終わらない。民法621条は、借りた後に生じた損傷を、契約終了時に原状に戻す義務を賃借人に課す。通常の使用による損耗と経年変化は除かれる。前の店が施工した設備や配管をどこまで戻すかは、契約書の原状回復条項で決まる。
原状回復条項は、造作の譲渡対象の一覧と並べて読むと食い違いを見つけやすい。譲り受けた設備が、退去時には撤去の対象になっていることがあるからだ。
譲り受けた什器を、退去時に貸主へ買い取らせる前提も立てにくい。借地借家法33条は、貸主の同意を得て付けた造作について、契約の終了時に時価で買い取るよう貸主に請求できると定める。ただし全日本不動産協会の解説(2005年1月号掲載)は、テーブルやいす、什器は造作に当たらないとし、平成4年(1992年)8月1日以降の契約では請求権を放棄する特約も有効だとする。
このため、譲り受けたテーブルやいす、什器は、退去時に貸主へ買い取らせる前提で譲渡額を見込めない。造作に当たる設備についても、放棄特約の有無は申し込み前に契約書で見ておく。
譲渡額に改装費を足し、新しく内装を作る場合と比べる
4点が書面でそろったら、費用を合計して比べる。比べる対象は造作譲渡額だけではない。飲食店ドットコムによると、造作譲渡額が申し込み後の話し合いで決まる物件もあり、居抜きの情報は早く出る分、精度が多少劣る場合がある。申し込む前に、譲渡の対象と金額が書面で示されているかを確かめたい。
譲渡額に足すのは、改装費と買い替え費だ。同サイトは、業態を変えると動線の変更で改装費が増え、給排水・ガス・電気の配置まで動かせばさらにかさむとする。前の店の評判を引き継がない対策として同サイトが挙げる外観の変更も、行うなら改装費に含めて見積もる。冷蔵庫や食器洗浄機が故障すれば、高額な再購入費用がかかるおそれもある。型番と製造年、動作状態の一覧があれば、譲渡額が設備の状態に見合うかを見積もりと並べて判断しやすい。
- 設備の一覧をもらう設備名・型番・製造年・動作状態と、購入品かリース品かを一行ずつ書面で受け取る
- リース品の行き先を決める残リース料を誰が払うか、契約を引き継ぐか返却するかを前の店とリース会社に確かめる
- 貸主の承諾条件を読む賃借権の譲り受けか新規契約か、原状回復条項、造作買取請求権の放棄特約の有無を契約書で見る
- 改装と撤去を分けて見積もる撤去する設備、業態に合わせた動線・給排水などの変更、故障時の買い替えを別々に業者に見積もらせる
- 専門家に条項を見てもらう譲渡契約・賃貸借契約・リース契約の条項を弁護士などに見てもらってから申し込む
比べた結果、譲渡額・改装費・買い替え費の合計が、新しく内装を作る場合の見積もりを下回るなら、居抜きを選ぶ理由になる。差が小さいなら、退去時の撤去まで自分で決められる新規内装のほうが、後の負担を読みやすい。
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