閉店は物件の終了日から逆算する 解約・解雇・届出の期限と費用
閉店の日程は、最終営業日ではなく賃貸借契約の終了日から組むと費用を抑えやすい。解雇予告の30日、買取代金が搬出後に入る時期、社会保険や保健所への届出の期限を並べ、違約金や入金待ちの資金の谷を小さくする日付の決め方を示す。

閉店を決めると、まず最終営業日を一つ決めたくなる。だが店の終わりには、物件の契約、従業員の雇用、厨房機器の搬出、行政への届出という4つの区切りがあり、それぞれ期限も費用も違う。解雇には少なくとも30日前の予告か、その日数分の手当が要り、厨房機器の買取代金は搬出が済むまで入らない。従業員を社会保険に入れていた事業所そのものをたたむなら、事業をやめてから5日以内に年金事務所へ届け出る。動かしにくい物件の終了日から逆算して残りの日付を並べると、違約金や営業をやめた後の家賃、入金待ちの資金の谷を小さくできる。
最初に決めるのは営業終了日ではなく物件の終了日
閉店の日程をまず縛るのは賃貸借契約だ。栄光綜合法律事務所によると、期間を定めた賃貸借では、中途解約できるとする条項がなければ、借主の申し入れだけで契約を終えることは原則できない。牛島総合法律事務所は、店舗の賃貸借で中途解約を認める場合にも、違約金の条項を併せて定める例があると解説している。
営業をやめても家賃の支払いは止まらない。契約書で読むべきは、解約できるかどうか、予告期間と通知の方法、違約金の計算式、明け渡すときの状態(原状回復の範囲)の4点だ。条項で解約できない場合や違約金が重い場合は、貸主との合意で契約を終える道がある。その際は終了日、精算額、返す状態を書面に残しておくと、明け渡しの直前にもめにくい。居抜きで設備を残す案を考えるなら、貸主の承諾と原状回復の扱いを契約で確かめる。
物件の終了日が決まれば、原状回復工事と設備の搬出をその前に収める必要が出てくる。工事できる曜日や時間帯、指定業者の有無は契約ごとに違うため、工事の段取りが固まってから最終営業日を決めて告知する方が、日付を後で動かさずに済む。
- 契約書の解約条項を読む解約権の有無、予告期間、違約金、原状回復の範囲を書き出す
- 物件の終了日を決める条項どおりに解約するか、貸主との合意で終えるかを選び、書面に残す
- 工事と搬出の日を決める原状回復工事と厨房機器の引き取りを終了日の前に収める
- 最終営業日と通知日を決める従業員への通知は最終勤務日の30日前までが原則
- 廃止後の届出を出す年金事務所、ハローワーク、保健所、税務署などへの届出を、それぞれの期限までに出す
従業員への通知は最終勤務日の30日前が原則
厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」によると、解雇するには少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として払う必要がある。予告が30日に満たなければ、足りない日数分の平均賃金を払う。最終営業日の告知が遅れるほど、手当の負担が増える計算になる。
ただし手当を払えば解雇が有効になるわけではない。同資料は、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない解雇は無効になると説明する。期間を定めた契約の途中で解雇するには「やむを得ない事由」が要り、閉店日と契約の満了日がずれる人は別に扱う必要がある。退職を話し合いで合意する場合も、解雇とは手続きが異なる。
予告の例外について、厚生労働省の労働条件相談サイトは、事由によっては労働基準監督署長の認定が必要になると説明している。例外に当たるかを自分で判断せず、労働基準監督署か社会保険労務士に相談するのが安全だ。従業員ごとの契約期間、最終勤務日、未払い賃金の一覧は、個人の情報を含むため、手続きを担う人だけで管理したい。
厨房機器の買取代金は搬出後に入り、帳簿の残りは目安にならない
厨房機器を売って閉店費用に充てる計画は、入金の時期で崩れやすい。テンポス買取ドットコム「よくある質問」によると、引き取りには別に搬出費用がかかり、代金は搬出後、本人確認書類・確認サイン・口座情報がそろってから支払われる。型番や状態からの概算査定と、現物を見た後の最終金額も分けて扱われる。
帳簿上の価額も売値の目安にはならない。国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」が説明するように、減価償却は取得費用を使う期間の各年の経費に配分する手続きで、中古の市場価格とは別の数字だ。売れるかどうかは、型番、動作の状態、所有関係で決まる。リースで借りている機器は、テンポス買取ドットコムによると所有に関する手続きが別に必要になる。
このため設備の一覧は、型番、状態、所有者、引き渡せる日を並べ、買取額、搬出費、処分費を別の欄に分けておくとよい。機器の取り外しが買取側と原状回復工事の両方の見積もりに入っていると、同じ作業に二重に払うことになる。査定額は、最終金額が出るまで収入として資金計画に入れない方が安全だ。
届出は社会保険の5日以内が最短、保健所と雇用保険は10日以内
閉店後の届出は、出す先ごとに期限が違い、従業員を雇っていた店ほど数が増える。中でも期限が短いのは社会保険だ。日本年金機構によると、健康保険・厚生年金保険の適用事業所が事業を廃止したり休止したりした場合、事業主は事実の発生から5日以内に「適用事業所全喪届」を出す。
雇用保険は、厚生労働省の手続き一覧表によると、事業所を廃止した翌日から10日以内に「雇用保険適用事業所廃止届」をハローワークへ出す。辞めた従業員の資格喪失届も、資格を失った翌日から10日以内が期限だ。給与を払っていた店は、国税庁「A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」により、廃止から1か月以内に税務署へ届け出る。
営業許可の側では、新宿区「営業許可等の手続きについて」が、営業所を廃止したら営業許可書を添えて10日以内に廃業届を出すよう案内している。新宿区以外の店は、期限や方法を所在地の保健所の案内で確かめる。店を人に譲って営業を引き継がせる場合は、廃業ではなく承継の手続きになることがある。深夜0時以降に酒類を出す届出をしていた店は、高知県警察の手引きにあるように、廃止の日から10日以内に警察署を経由して公安委員会へ廃止届出書を出す。
個人事業主は、国税庁「廃業する場合」と国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」によると、廃業した年分の確定申告期限までに「個人事業の開業・廃業等届出書」を出す。青色申告の取りやめや消費税の事業廃止の届出は、対象者と条件が別に決まっている。ここまでの届出の多くは、事業所や事業そのものをやめる場合のものだ。何店かあるうちの1店だけを閉めて他の店や事業を続ける場合は、税務署の廃業届に限らず、社会保険の全喪届や雇用保険の廃止届も対象にならないことがある。店ごとにどの届出が要るかは、税理士や社会保険労務士に確かめたい。
| 届出 | 出す先 | 期限 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 適用事業所全喪届 | 年金事務所 | 事実の発生から5日以内 | 社会保険の適用事業所が事業を廃止・休止した場合 |
| 雇用保険適用事業所廃止届 | ハローワーク | 廃止の翌日から10日以内 | 雇用保険の適用事業所 |
| 廃業届 | 保健所 | 廃止から10日以内(新宿区の例) | 営業許可を受けた営業所 |
| 深夜酒類提供飲食店営業の廃止届出書 | 警察署経由で公安委員会 | 廃止の日から10日以内 | 深夜酒類提供の届出をしていた店 |
| 給与支払事務所等の廃止届出書 | 税務署 | 廃止から1か月以内 | 給与を払っていた事業者 |
| 個人事業の開業・廃業等届出書 |
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