飲食業の倒産、年度上半期で初の500件超 ラーメン店は46%増
2026年度上半期の飲食業の倒産は514件で、年度上半期として初めて500件を超えた。資本金1千万円未満が約9割、破産が94%で、原因の8割は販売不振。10月の最低賃金引き上げ後は、人件費率・値上げ後の客数・手元資金が分かれ目になる。

2026年度上半期(4〜9月)に倒産した飲食業は514件で、年度上半期として初めて500件を超えた。東京商工リサーチ(TSR、10月8日公表)によると、前年同期比3.4%増えた。年度上半期では1997年以降の30年間で最多だ。倒産した事業者の約9割は資本金1千万円未満の小規模事業者で、原因の8割は販売不振だ。TSRは、食材費や光熱費、人件費の上昇が資金繰りを圧迫する一方、値上げは客足に響くため価格転嫁が遅れやすいと分析している。TSRは10月以降の最低賃金引き上げで人件費がさらに上がるとも指摘しており、年度下半期はこの板挟みが一段と強まる可能性がある。
ラーメン店が46%増、食堂・レストランは110件で28%増
業態別では、食堂・レストランが110件と多く、前年同期比27.9%増えた。増加率が最も高いのはラーメン店の46.4%増で、TSRは「飲食業界ワースト」としている。居酒屋は96件と、表に挙げた業態の中では食堂・レストランに次いで多いが、増加率は15.6%で、食堂・レストラン、ラーメン店、中華料理店はいずれもこれを上回った。
色:列の中で数字が大きいほど濃い青
| 業態 | 件数(件) | 前年同期比(%) |
|---|---|---|
| 食堂・レストラン | 110 | +27.9 |
| 居酒屋 | 96 | +15.6 |
| ラーメン店 | 41 | +46.4 |
| 喫茶店 | 35 | +12.9 |
| 中華料理店 | 16 | +33.3 |
居酒屋以外でも、食堂・レストランやラーメン店など日常の食事を担う業態で件数と増加率が伸びており、業態によって安心できる状況ではない。
資本金1千万円未満が約9割、破産が94%を占める
飲食業の倒産は規模の小さい事業者に集中し、形態はほとんどが再建を経ない破産だ。TSRによると、514件のうち資本金1千万円未満が460件、負債1億円未満が456件、破産が484件だった。
- 資本金1千万円未満
- 89.4%
- 負債1億円未満
- 88.7%
- 破産
- 94.1%
460件
456件
484件
負債額で見ると、1千万円以上5千万円未満が379件と全体の73.7%を占める。事業を続けながら立て直す民事再生法は22件にとどまった。負債額の小さい倒産が大半を占めることから、大きな借金がなくても、売上が落ちた月を手元資金で埋められなくなった店が行き詰まっているとみられる。
原因の8割は販売不振、物価高と人手不足の倒産が急増
TSRの原因別集計では、514件のうち「販売不振」が424件で、構成比は82.4%だった。これとは別の切り口で、TSRは「物価高」による倒産を79件、「人手不足」による倒産を41件としている。件数では販売不振が圧倒的だが、前年同期からの増え方は物価高と人手不足の方が大きい。
色:列の中で数字が大きいほど濃い青
| 要因 | 件数(件) | 前年同期比(%) |
|---|---|---|
| 販売不振 | 424 | +7.3 |
| 物価高 | 79 | +23.4 |
| 人手不足 | 41 | +57.6 |
物価高と人手不足は販売不振と重なって数えられている可能性があるため、3つを足し合わせず、増え方の違いとして読むのが妥当だ。TSRは、インバウンド需要が小・零細の店に届きにくいことも背景に挙げている。
コストの負担は飲食業に限らない。TSRの全国企業倒産状況によると、全産業で「人件費高騰」による倒産は130件と、前年同期の74件から大きく増えた。これを含む人手不足関連の倒産は240件で、年度上半期として過去最多だ。人を確保するための賃上げが、小さな事業者の経営を圧迫しているとみられる。
10月以降の分かれ目は人件費率、値上げ後の客数、手元資金
TSRの分析を店の数字に置き換えると、持ちこたえられるかを左右するのは3つだ。1つ目は人件費率で、10月以降の最低賃金引き上げの前後の月で、人件費が売上の何%になったかを比べれば負担の増え方がわかる。2つ目は値上げ後の客数で、TSRが指摘するとおり値上げは客足に響くため、原価率とあわせて価格改定の前後の客数を記録しておくと、次の値上げ幅を決める材料になる。3つ目は手元資金で、月の返済額と固定費を何か月まかなえるかを把握しておく。
判断の条件ははっきりしている。値上げ後も客数が保てているなら、最低賃金の上昇分を価格に反映する余地がある。客数が落ちているなら、値上げより、メニューの絞り込みや営業時間の見直しで人件費と原価を抑える方が先になる。人件費率と原価率がともに悪化し、手元資金で固定費をまかなえる期間が短くなっているなら、資金が尽きる前に取引金融機関や税理士へ相談する段階だ。融資・支援制度の条件は、公募要領や専門家への確認が必要になる。今後は、TSRが毎月公表する全国企業倒産状況で、最低賃金改定後の10月以降に飲食業の倒産件数がさらに増えるかが注目点となる。
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