深夜に酒を出す店、接待と物件次第で届出では開業できない
午前0時以降に酒類を出す店は届出で営業できるが、接待や照度10ルクス以下の客席、深夜の遊興があれば許可が要る。都道府県の条例で、住居系の用途地域などでは届出の営業も禁じられる。開業10日前の届出に向けた段取りと、開業後の変更届の期限も示す。

午前0時以降も酒を出すバーや居酒屋は、公安委員会への届出で営業できる。ただし、客の接待、照度10ルクス以下の客席、深夜の遊興のどれかがあれば許可が必要になり、届出では代えられない。届出で足りる営業でも、愛知県では住居系の7つの用途地域で営業できない。深夜の売上を見込む開業計画は、開業10日前という届出期限より前に、営業の中身と物件の所在地で成否が決まる。
接待や暗い客席は許可が要り、届出の店も20ルクス超が条件
警視庁「許可・届出の対象となる営業」によると、届出で営めるのは、午前0時から午前6時までの間に設備を設けて酒類を出す「深夜酒類提供飲食店営業」だ。客の接待、照度10ルクス以下の客席、見通しが困難な5平方メートル以下の客席のいずれかがあれば風俗営業となる。風俗営業に当たらなくても、深夜に客に遊興をさせて酒を出せば特定遊興飲食店営業となり、どちらも公安委員会の許可が要る。
| 予定する営業・設備 | 区分 | 手続き |
|---|---|---|
| 客を接待して遊興・飲食させる | 風俗営業(1号) | 公安委員会の許可 |
| 客席の照度を10ルクス以下にして飲食させる | 風俗営業(2号) | 公安委員会の許可 |
| 見通しが困難で5平方メートル以下の客席を設ける | 風俗営業(3号) | 公安委員会の許可 |
| 深夜に客に遊興をさせ、酒類を出す(風俗営業を除く) | 特定遊興飲食店営業 | 公安委員会の許可 |
| 午前0時~6時に酒類を出す(通常主食を出す営業の常態を除く) | 深夜酒類提供飲食店営業 | 公安委員会への届出 |
警視庁「許可・届出の対象となる営業」は、営業の常態として通常主食と認められる食事を出す店を、深夜酒類提供飲食店営業から除いている。主食のメニューが1品あるかどうかではなく、主食を出すことが営業の常態かどうかで決まる。自店が当たるか迷う場合は、所轄警察署で確かめる。
区分を決めるのは、バーやスナックといった業態の名前ではなく、接客の方法と内装である。許可が必要な営業を届出で始めることはできないため、接客や内装に上の要素を含めるなら、開業日の前提から組み直すことになる。風俗営業は許可を得ても、e-Gov「風営適正化法」の第13条により原則として午前0時から午前6時までは営業できない。
届出で済む店にも内装の基準がある。e-Gov「風営法施行規則」の第99条は、深夜に営業する飲食店に、営業所内の照度を20ルクス以下にしないこと、客室に見通しを妨げる設備を置かないことを求める。客室1室の広さも9.5平方メートル以上とする(客室が1室だけなら除く)。照度を10ルクスより少し明るくしただけでは、風俗営業には当たらなくても届出の基準を満たさない。照明の明るさや席の区切り方は、内装設計の段階で20ルクスを基準に決めておく必要がある。
住居系の用途地域では、届出で済む営業も開けない
e-Gov「風営適正化法」の第33条は、都道府県が条例で地域を定め、深夜酒類提供飲食店営業を禁止できるとする。禁止地域は都道府県ごとに決まる。
愛知県警察「営業開始届出手続」は、第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、田園住居地域を第一種地域とし、ここでは営業できないとする。宮城県警察の届出案内も、住居地域等での営業が条例で禁止されていると示し、用途地域を確認できる書類の提出を求めている。
住宅街に近い路面店や、駅から離れた住居系の地域の居抜き物件は、家賃が手ごろでも深夜の酒類提供ができない場合がある。禁止地域の範囲は都道府県で異なるため、愛知県の一覧を他県に当てはめず、物件のある都道府県警察の案内と、仲介資料の用途地域を契約前に突き合わせることになる。
届出は開業10日前まで、内装と図面を先に固める
愛知県警と宮城県警はともに、営業を始める日の10日前までに、営業所を管轄する警察署の生活安全課へ届け出るよう案内している。宮城県の手数料はかからない。
警視庁の届出案内が挙げる書類は、開始届出書、営業の方法を記載した書類、営業所の平面図、本籍記載の住民票の4種類だ。法人の場合は、定款、登記事項証明書、役員全員の住民票が加わる。宮城県警は、平面図に出入口の位置や椅子、テーブルの配置を描き、住民票はマイナンバーの記載がないものを出すよう求める。
- 営業区分を決める接待、照度10ルクス以下の客席、区画席(見通しが困難な5平方メートル以下の客席)、深夜の遊興がない営業かを決め、照度20ルクス超・見通しを妨げない客室で内装を計画する
- 物件の用途地域を見る所在地が条例の営業禁止地域に入っていないかを、契約前に用途地域で照らす
- 保健所の営業許可を得る宮城県警は飲食店営業許可証の写しを届出時の提出書面に挙げている
- 届出書類をそろえる開始届出書、営業の方法、客席配置を描いた平面図、本籍入りの住民票の写し(法人は定款・登記事項証明書も)
- 開業10日前までに提出営業所を管轄する警察署の生活安全課に出す
保健所の飲食店営業許可は、深夜営業かどうかにかかわらず飲食店を開く前提になる。宮城県警は届出時に許可証の写しも求めているため、同県で開業する場合は保健所の許可を先に得てから届け出る段取りになる。平面図は客席の配置を描くため、内装と客席の計画が固まってから作ることになる。10日前は提出の期限であり、書類の準備や保健所の手続きにかかる日数は含まない。
開業後も、店名や設備を変えれば10日以内に届け直す
愛知県警察によると、氏名・名称や住所(法人は代表者の氏名を含む)、営業所の名称、構造と設備の概要(軽微な変更を除く)が変わったときは変更届が要る。期限は変更の日から10日以内で、法人の名称・住所・代表者の氏名の変更は20日以内だ。営業をやめたときも、廃止の日から10日以内に廃止届を出す。
客席を増やす改装や店名の変更は、保健所の手続きだけでなく警察への届出にも関わる。改装で照明や席の区切り方が変われば、届出の範囲を超えて許可が必要な区分に入らないかも併せて見直すことになる。
深夜に酒を出す店を開くかどうかは3点で判断できる。接待・暗い客席・区画席・深夜の遊興のいずれもなく照度20ルクス超の内装か、物件が禁止地域の外にあるか、図面などの届出書類が開業10日前までにそろうかだ。接待や照度10ルクス以下の客席、区画席を設けると風俗営業の許可が要り、許可を得ても原則として午前0時以降は営業できない(条例が午前0時以降の営業を認める地域・日は例外)。深夜に酒を出すなら、これらをなくして届出の範囲に収めることになる。物件が禁止地域にある場合は、深夜0時までの営業で始めるか、物件を替えるかを選ぶ。接客や内装が区分の境目にある場合は、所轄警察署の生活安全課や行政書士に事前に相談して区分を確定させる。
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