食品の消費税1%法案、店内飲食との税率差は9ポイントに
飲食料品の消費税を2027年4月から2年間1%に下げる法案が10月9日に閣議決定された。店内飲食10%との差は9ポイントに開く。価格の付け方と、本則課税の店で納税が増えうる点、個人なら2026年12月31日が期限の簡易課税の届出を整理する。

法案が成立すれば、2027年4月から、同じ料理でも持ち帰りや出前は消費税1%、店内で食べれば10%になる。政府は2026年10月9日、飲食料品の税率を8%から1%に2年間下げる法案を閣議決定した(共同通信(熊本日日新聞掲載))。食材の仕入れの税率も下がるため、本則課税で店内飲食中心の店は、年商4,000万円の試算で納める消費税が112万円増える(いしい税理士・行政書士事務所)。課税売上高5,000万円以下で店内飲食だけの個人事業者が2027年分から簡易課税に切り替えるなら、届出の期限は2026年12月31日だ。店にとっての論点は、店内と持ち帰りの価格をそろえるか分けるかと、納税額が増える点への備えの二つになる。
法案は持ち帰り・出前を1%、店内飲食を10%とする
法案の柱は、飲食料品の税率を2027年4月から2年間に限って1%に下げることだ。共同通信によると、1989年の消費税導入後、税率の引き下げは初めてで、政府は国会に提出して早期成立を目指す。
1%の対象は、いま8%の飲食料品と同じ範囲になる。国税庁のQ&Aは、法案が成立した場合の内容として、テイクアウトと出前・宅配を1%、外食とケータリング等を10%に分けている。税抜1,000円の料理なら、持ち帰りの方が店内より約8%安くなる。
- 持ち帰り・出前と店内飲食の税率差
- 9ポイント
- 税抜1,000円の料理の店内と持ち帰りの差額
- 90円
- 税率1%の期間
- 2年間
現行は2ポイント
店内1,100円/持ち帰り1,010円。現行は20円(1,100円/1,080円)
2027年4月1日〜2029年3月31日
2019年の来客5.4%減を上回る客離れを業界は懸念
業界が警戒しているのは、税率差が開いた後の客離れだ。日食外食レストラン新聞によると、軽減税率で2ポイントの差ができた2019年には、外食全体の来客数が一時5.4%減った。同紙は、今回それを上回る影響が懸念されると書く。日本フードサービス協会の椋本充士会長は同協会の9月10日の会見で、「外食を控える空気感が生まれることを非常に危惧している」と述べた。税率差は2ポイントから9ポイントへ、4.5倍に開く計算になる。
ただし影響の大きさは店によって違う。椋本会長は7月の共同通信のインタビューで、減税の影響は業態の多様性や地域性で一概に見通しにくいと説明している。自店の持ち帰りの比率や客層に照らして、客数の変化を見込んでおきたい。
価格は店内と持ち帰りでそろえる店が多いが、記帳は税率ごとに分ける
価格をそろえるか分けるかでは、そろえる方針の店が多い。ミツモアの調査(2026年8月、店内飲食と持ち帰りの両方を行う飲食店134人)では、同じ税込価格にする方針が53.0%で最多、持ち帰りを店内より安くする方針は計23.1%だった。
ただし同じ価格にしても、適用される税率は別のままだ。いまも店内と持ち帰りを同じ税込価格にはできるが、注文時に店内か持ち帰りかを確かめ、税率ごとに記帳・申告する必要がある(ミツモア)。国税庁のQ&Aでは1%の対象は現行8%と同じ範囲なので、この扱いは1%の後も続くとみられる。そろえればレジや値札は一本で済み、分ければ持ち帰りの割安さを打ち出せるがレジや値札は二本立てになる。法案が成立すれば、値札の貼り替えが間に合わない場合は2027年2月1日〜5月31日、支払額と誤認させない掲示を条件に8%か1%での総額表示が認められる(国税庁)。価格方針は2027年4月までに、レジの設定と合わせて決めればよい。
本則課税の店は納税増も、簡易課税の届出は個人なら12月31日まで
店内飲食中心で本則課税の店は、納める消費税が増えうる。食材の仕入れは1%に下がるのに店内飲食の売上は10%のままなので、差し引ける仕入れの税額が減るためだ。いしい税理士・行政書士事務所の試算では、年商4,000万円・食材仕入1,600万円・その他課税経費1,200万円の店で、納付税額は152万円から264万円へ112万円増える。
簡易課税を選べば、この影響は避けられる。同じ店が簡易課税なら納付は160万円で、食材の控除の影響を受けない。ただし簡易課税を選べるのは、基準期間(個人は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下の事業者に限られる(国税庁)。5,000万円を超える店や本部は本則課税で計算するため、食材の比率が高いほど納税が増える前提で資金を見込むことになる。
期限は価格より早い。同事務所によると、店内飲食だけの店は届出の特例の対象外になる。簡易課税制度選択届出書の期限は、個人事業者なら2026年12月31日、3月決算法人なら2027年3月31日だ。テイクアウトを併設していれば、1%の部分に簡易課税の計算特例が使える。どちらが有利かは店の数字で変わるため、期限より前に税理士と試算しておきたい。
国の外食支援は大綱に載ったが、中身は予算編成で決まる
国の外食支援は9月15日の大綱に載り、中身はこれからの予算編成で決まる。内閣官房の大綱資料が外食事業者向けに掲げた支援は下の表の三つで、特にテイクアウト等の多角化を挙げている。いずれも、関係府省庁が事業者の実情を確かめながら、予算編成の過程で具体化するとしている。
業界の要望とは開きがある。日食外食レストラン新聞によると、協会は9月10日の会見で、表にある食事券と価格表示の見直しを求めた。秋元巳智雄副会長は、資金繰り支援は事業が立ち行かなくなることを前提にしたもので、必要な支援との間に「ギャップがある」と指摘する(同紙)。
| 中身 | 段階 | |
|---|---|---|
| 国:資金繰り支援・省力化等の支援 | 外食・食品事業者向け | 大綱に記載、予算編成で具体化 |
| 国:テイクアウト等の多角化の支援 | 特に外食事業者向け | 大綱に記載、予算編成で具体化 |
| 国:本則課税へ移る際の相談対応・税理士費用等の支援 | 簡易課税・免税の外食事業者等向け | 大綱に記載、予算編成で具体化 |
| 業界:プレミアム食事券 | 消費者の来店を促す | 日本フードサービス協会が9月10日に要望 |
| 業界:価格表示の見直し | 「本体価格+税」の表記を可能にする | 日本フードサービス協会が9月10日に要望 |
法案が中身を変えずに成立する前提なら、やることは期限の早い順に三つある。まず、本則課税と簡易課税のどちらで納税額が少なくなるかを税理士と試算すること。簡易課税にするなら、個人は2026年12月31日まで、3月決算法人は2027年3月31日までに届け出る。次に、2027年4月までに店内と持ち帰りの価格方針を決め、レジと値札を合わせること。そして、自店の持ち帰りの比率に照らして、店内の客数が減った場合の売上と資金繰りを見込んでおくことだ。外食支援は額も要件もまだ示されていないため資金計画には入れず、大綱のとおり予算編成の過程で中身が具体化されてから使い方を考える方が無理がない。法案は10月5日召集の臨時国会(会期は12月12日まで)で審議され、野党は財源と給付対象の曖昧さを批判している(共同通信、共同通信)。注目すべきは、法案の成立時期と修正の有無、そして予算編成で外食支援の額が決まるか、業界が求める食事券が入るかどうかだ。
出典
- 共同通信(熊本日日新聞掲載)2026年10月9日 食品消費税1%法案を閣議決定
- 国税庁 飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A(2026年9月)
- 国税庁 リーフレット 飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについて(2026年9月)
- いしい税理士・行政書士事務所 食料品の消費税1%|大綱と国税庁Q&Aで判明した届出などの実務対応
- ミツモア(PR TIMES)2026年8月28日 飲食料品の消費税1%へ 飲食店の価格方針調査
- 共同通信(熊本日日新聞掲載)2026年10月4日 国会5日召集、消費減税で論戦へ
- 共同通信(熊本日日新聞掲載)2026年7月7日 外食需要喚起へ食事券配布を
- 日食外食レストラン新聞(日本食糧新聞社) 2026年10月5日付 消費税減税に強い危機感
- 国税庁 タックスアンサーNo.6505 簡易課税制度
- 内閣官房 飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱(2026年9月15日 資料2)
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