飲食店の創業融資、借入額を決める三つの根拠
公庫の創業融資は開業前でも原則無担保・無保証人で申し込めるが、借入額を決めるのは限度額7,200万円ではない。設備の見積書、開業後の運転資金、売上から返済できるかという三つの根拠で、借りるべき額を組み立てる方法を示す。

飲食店の開業前でも、日本政策金融公庫の創業融資は原則として無担保・無保証人で申し込める。新規開業・スタートアップ支援資金の融資限度額は7,200万円だ。ただし、借入額を決めるのは限度額ではない。設備の見積もり、開業後の運転資金、売上から返済できるかという三つの根拠が、借りられる額と借りるべき額を決める。無担保で申告2期未了の人の基準利率は年3.85〜5.45%(2026年10月1日現在)で、借りすぎは開業後の返済負担に直結する。
設備は20年、運転資金は10年で返す前提で分けて組む
公庫によると、同資金は新たに事業を始める人か、事業開始後おおむね7年以内の人が対象だ。返済期間は使途で異なり、設備資金は20年以内、運転資金は10年以内となる。どちらも据置期間は5年以内だ。据置期間中は元金の返済を待ってもらえるが、その分、残りの期間で元金を返すため、据置を長く取るほど据置後の毎月の返済は重くなる。
- 融資限度額
- 7,200万円
- 設備資金の返済期間
- 20年以内
- 運転資金の返済期間
- 10年以内
設備資金・運転資金が対象
うち据置期間5年以内
うち据置期間5年以内
出典:日本政策金融公庫
同じ借入額でも、運転資金の比率が高いほど返済期間が短くなり、毎月の返済額は重くなる。開業費用を一つの総額で示さず、内装・厨房と、開業後の仕入れ・家賃・人件費に分けて見積もると、返済計画と借入額の関係が見える。
根拠1:設備資金は見積書で説明できる額が根拠になる
設備資金を申し込むには見積書が必要だと、公庫の創業予定者向け案内は挙げている。資金計画のセルフチェックも、最初に見積金額が妥当かを確認項目に挙げる。
内装や厨房機器の金額は、業者の見積書で説明できる分が借入の根拠になる。セルフチェックは相見積もりを取っているかも確認する。複数の業者から取った見積もりを比べ、何に使う設備かを計画書に書いておくと、面談で金額の妥当性を説明しやすい。
| 根拠 | 公庫が確認する点 | 用意する資料 |
|---|---|---|
| 設備資金 | 見積金額は妥当か | 業者の見積書 |
| 運転資金 | 開業後の運転資金を見込んでいるか、借入に頼りすぎていないか | 資金計画(必要資金と調達方法) |
| 売上と返済 | 売上・原価の計算根拠、経費の漏れ、利益から返済できるか | 創業計画書の収支計画 |
根拠2:運転資金は開業後の赤字を支える月数で決める
資金計画のセルフチェックは、開業後の運転資金として半年程度の赤字補てん資金を検討するよう挙げている。自己資金が少なく、借入に頼った調達になっていないかも確認項目だ。
飲食店では、内装・厨房に資金を寄せすぎると、客数が計画に届かない間の仕入れや家賃、人件費を払う余地がなくなる。必要資金の合計と、自己資金・借入などの調達合計を一致させる。セルフチェックは、親や兄弟などからの借入について内訳と返済方法を書くよう求めているので、親族からの借入も公庫の借入とは分けて返済条件を書く。
根拠3:売上は席数と回転数で示し、利益から返す
公庫の洋風居酒屋の創業計画書記入例は、売上を客単価×席数×回転数×営業日数で計算し、昼夜や曜日で分けている。収支計画のセルフチェックは、売上と原価の計算根拠、経費の漏れ、利益から返済できるかを確認する。
面談では資金の使い道と事業計画を聞かれ、店舗の予定地も訪問を受けると公庫の案内は書く。売上の前提を立地や客層、営業時間に合わせて説明できれば、予定地を見た担当者にも計画の根拠が伝わる。計画全体の説得力には経歴も関わる。略歴のセルフチェックは、勤務先名だけでなく担当業務、役職、実績、資格を書くよう求める。店長として売上や仕入れを管理した経験があれば、売上の前提をその実績と結びつけて説明できる。
金利も一律ではない。公庫の金利情報は、制度・使途・期間・担保の有無で利率が異なるとしている。創業融資のご案内では、創業融資に原則0.65%、雇用拡大を図る場合は0.9%の利率引下げを示す。個別の適用利率は窓口で確かめる必要があるため、収支計画では基準利率の上限の5.45%で返済額を計算し、それでも利益から返せるかを試しておくと、計画が崩れにくい。
三つの根拠を結ぶと、毎月の返済額が利益の範囲に収まる額が、借りるべき額の目安になる。回転数を一段低く見積もっても返済が続くかを試し、続かなければ設備を抑えるか、自己資金を増やすかを選ぶ。希望額から逆算するより、見積書、運転資金の月数、売上の根拠の三つを並べる方が、借入額を説明しやすく、開業後の資金繰りも崩れにくい。
出典
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