飲食店の補助金は公募要領の5項目で選ぶ 年内に締め切る2制度を比較
業務改善助成金と持続化補助金第20回は、締切が2026年11〜12月に集中する。公募要領の5項目で見る対象と上限、第20回で加わった売上増の条件、制度ごとの申請経路とGビズIDの準備期間、交付決定前の発注の落とし穴を整理する。

飲食店が2026年内に申請できる国の補助金のうち、賃上げと設備投資に使う業務改善助成金と、販促に使う小規模事業者持続化補助金は、締切が年内に集中する。業務改善助成金の申請期限は所在地の地域別最低賃金の発効日の前日か11月30日の早い方で、9月末から順に締め切られ、遅い地域でも11月30日で終わる。持続化補助金第20回は12月15日が締切だが、商工会・商工会議所に頼む書類の受付は12月4日までだ。持続化補助金の申請に要るGビズIDは、書類で申し込むと審査に最大1か月かかる。どちらかを使うなら、まず所在地の締切が過ぎていないかを確かめ、自店が対象かを見極めたうえで、IDと書類の準備にすぐ入れるかが分かれ目になる。
自店がどちらの対象かは公募要領の5項目で決まる
公募要領は数十ページあるが、自店が対象かどうかは目的、応募資格、対象経費、補助率と上限、申請方法と期限の5項目で決まる。2制度を並べると、持続化補助金は販促、業務改善助成金は賃上げと設備投資という使い道の違いがはっきりする。
| 項目 | 持続化補助金(第20回・第8版) | 業務改善助成金(令和8年度) |
|---|---|---|
| 目的 | 販路開拓等と、併せて行う業務効率化の経費の一部を補助 | 事業場内最低賃金を50円以上上げ、生産性向上の設備投資等をした費用の一部を助成 |
| 応募資格 | 小規模事業者(商業・サービス業〈宿泊業・娯楽業除く〉は常時使用する従業員5人以下) | 中小企業・小規模事業者で、事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満 |
| 対象経費 | 機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費など8区分 | 生産性向上に資する設備投資等(例:POSレジシステムの導入) |
| 補助率・上限 | 2/3、上限50万円(特例で最大200万円上乗せ) | 4/5または3/4。1人の賃上げなら上限30万〜100万円(最大600万円は特例事業者が10人以上を上げる場合) |
| 申請方法・期限 | 事務局の電子申請システムのみ(郵送不可)。締切は2026年12月15日17時(様式4の発行受付は12月4日まで) | Jグランツで電子申請(GビズIDプライムが必要)か、管轄の都道府県労働局へ紙で提出。期限は地域別最低賃金の発効日の前日か11月30日の早い方 |
出典:小規模事業者持続化補助金第20回公募要領(第8版、2026年7月21日)、厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」・業務改善助成金のページ
上限額は条件で大きく変わる。厚生労働省の案内によると、業務改善助成金の600万円は90円以上の賃上げを10人以上に行う区分だ。使えるのは特例事業者(事業場内最低賃金が1,050円未満か、申請前6か月平均の利益率が前年度より3ポイント以上下がった事業者)に限られる。小さな店で1人だけ上げるなら、上限は30万〜100万円だ。従業員5人以下の店が持続化補助金で広報費やウェブサイトの費用を出すのか、時給を上げてPOSレジなどを入れるのかで、選ぶ制度は決まる。
持続化補助金は第20回から売上増の計画が条件になった
前回までの感覚で申請すると、第20回で加わった条件を読み落とす。第20回の公募要領は、補助事業の終了後に売上高と売上総利益の増加が見込めることを対象事業の要件に加えた。市場や顧客の分析、値上げの見込みなどの根拠とともに、増加の数値を計画書に書く必要がある。
上限を150万円上乗せする賃金引上げ特例も条件が変わった。4月30日に締め切った第19回の公募要領では事業場内最低賃金を50円以上上げることが要件だった。第20回は、2027年4月から2028年3月までの12か月の従業員1人あたり給与支給総額を前年同月と比べ、年平均3.0%以上増やすことが求められる。達成は実績報告の時点で問われるため、2027年度の人件費の計画が立たないうちは特例を使わない選択もありうる。
申請経路は制度で違い、持続化補助金は1か月前に準備を始める
持続化補助金第20回の公募要領は、申請を事務局の電子申請システムだけで受け付け、郵送では出せない。利用にはGビズIDのプライムかメンバーが要り、誰でも作れるエントリーや暫定プライムでは申請できない。GビズIDの公式サイトによると、プライムを書類で申し込んだ場合の審査は最大1か月で、以前の最大2週間から延びた。マイナンバーカードとGビズIDアプリを使うオンライン申請なら、法人代表者は速やかに審査される。
業務改善助成金は出し方を選べる。厚生労働省の業務改善助成金のページによると、Jグランツで電子申請するか、管轄の都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ紙で出す。Jグランツを使うならGビズIDプライムが必要で、2026年度からは都道府県ごとに申請フォームが分かれている。紙で出す場合はIDを求められないため、IDをまだ持っていない店は紙で出せば審査を待たずに済む。所在地の申請期限は、同じページから地域別最低賃金の発効日の一覧で確かめられる。
持続化補助金ではIDに加えて、地域の商工会・商工会議所が出す事業支援計画書(様式4)が要る。社外の代理人だけでは発行を頼めず、受付は12月4日で締め切られる。申請から入金までの流れは次のとおりだ。
- GビズIDを取得プライムかメンバー。書類申請の審査は最大1か月
- 経営計画・補助事業計画を作成電子申請システムに入力する(様式2)
- 様式4の発行を依頼地域の商工会・商工会議所へ。受付は12月4日まで
- 電子申請システムで申請受付は11月5日から12月15日17時まで。採択発表は2027年3月頃の予定
- 見積書等の提出・交付決定交付決定日から補助事業を始められる
- 事業の実施と実績報告支払いを期間内に終え、経理書類を添えて報告
- 額の確定・請求・交付額の確定後に請求し、補助金が入金される
交付決定前の発注と立て替え資金が最大の落とし穴
採択されても、すぐに発注してよいわけではない。第20回の公募要領は、交付決定より前に発注・契約・支払いをした経費を対象外とし、採択発表から交付決定まで概ね1〜2か月かかる場合があるとしている。2027年3月頃の採択発表を前提にすると、改装や厨房機器の発注は早くても春以降の交付決定日を起点に工程を組むことになる。業務改善助成金も、交付決定を受けてから計画どおりに事業を進める仕組みだ。
もう一つは入金の時期だ。補助金は後払いで、支払いは事業期間内に終える必要がある。カード払いは引き落としまで期間内に済ませ、1取引10万円(税抜き)を超える現金払いは対象外になる。補助率2/3の持続化補助金でも、いったんは全額を店が立て替える。
判断の目安は3つある。店で最も低い時給(事業場内最低賃金)が所在地の新しい地域別最低賃金を下回る店は、業務改善助成金の対象になりうる。その時給を最低賃金の発効日の前日までに50円以上上げられ、申請期限(発効日の前日か11月30日の早い方)が過ぎていなければ、こちらを先に検討する。販促やウェブサイトに投資し、売上増の根拠を数字で示せるなら持続化補助金第20回が候補になる。どちらでも、全額を立て替える資金の当てがあるかが前提だ。制度の細部は回ごとに改訂され、第20回の公募要領も7月21日に第8版が出ている。申請前に最新版と商工会・商工会議所や社会保険労務士などの専門家の見解で確かめておきたい。直近で見る日付は、所在地の業務改善助成金の締切と、様式4の受付締切である12月4日の2つだ。
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