ゼロゼロ融資後の倒産、飲食店は高水準のまま 再生計画に基づく借換え保証と相談先
ゼロゼロ融資利用後の倒産は2026年度上半期に149件と減ったが、飲食店は20件で高水準が続く。利上げで金融機関が採算重視に変わるなか、リスケで足りるか、再生計画を作って2027年3月末まで使える借換え保証に進むかの判断と相談先を示す。

ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)を使った後に倒産した企業は、2026年度上半期(4〜9月)に149件と前年同期より30.6%減った。ところが飲食店は20件で、東京商工リサーチは「物価高で「飲食店」が高水準」と見出しに掲げた。日本銀行は9月に政策金利を1.25%程度へ上げ、金融機関は採算を重視する姿勢に変わっている。返済を先送りしてきた店ほど、次の交渉は条件が厳しくなりうる。借換えを支える経営改善サポート保証は2027年3月31日まで使えるが、対象は再生計画などに基づく借入である。それまでに借入を一覧にして資金が足りない月を割り出せば、リスケや借入の一本化で足りるか、再生計画を作って保証付きの借換えに進むかを、期限から逆算して判断できる。
倒産は3年連続で減ったが、飲食店は20件と高い水準が続く
- 全業種の倒産件数
- 149件
- うち飲食店
- 20件
- 2023年度上半期
- 335件
- 累計(2020年7月〜)
- 2,461件
前年同期比30.6%減
サービス業他41件の内数
年度上半期のピーク
2026年10月8日公表時点
全体の件数は減っているが、飲食店は20件と高い水準にある。東京商工リサーチによると、年度上半期の件数は3年連続で前年同期を下回り、9月単月は19件と4年7カ月ぶりに10件台へ下がった。産業別の最多は「サービス業他」の41件で、そのうち飲食店が20件を占める。暦年の上半期(1〜6月)を集計した7月8日の発表でも、飲食店は20件で業種別(中分類)の最多だった。
同社は飲食店の高止まりを、食材や人件費、光熱費が上がる一方で、顧客離れを恐れて価格転嫁が進まない状況の表れと分析している。値上げしにくいまま返済が続く構図は、多くの個人店にそのまま当てはまる。
この集計は、負債1,000万円以上の倒産のうちゼロゼロ融資の利用が判明したものに限られ、融資を受けた企業全体の状況を示す数字ではない。そのうえで、倒産した企業の63.0%は資本金1千万円未満で、90.6%は破産だった。倒産まで進んだ企業の9割は、再建ではなく清算型の手続きで終わっている。
利上げで金融機関は採算重視に、先送りした返済が焦点になる
返済の先送りを続けられる環境は変わりつつある。東京商工リサーチは10月の発表で、2024年3月のマイナス金利解除以降、金融機関が採算重視の姿勢に変わったと指摘した。そのうえで、過剰債務を抱えてリスケ(返済条件の変更)で返済を先送りしている企業への対応が注目されると書いている。
7月の発表では、金融機関がリスケや自行内の複数借入の一本化で返済負担を軽くする動きがある一方、新規貸出には厳しい対応も聞かれると伝えた。手元資金が尽きてから新しい融資を頼むより、既存の借入の組み替えを先に相談する方が、話は進めやすいとみられる。変動金利の借入がある店は、利上げが次の金利見直しで返済額にどう響くかも、借入の一覧に書き込んでおくと交渉の材料になる。
借換えの保証は2027年3月末まで、再生計画に基づく借入が対象
返済が重い店が使える公的な仕組みの1つが、信用保証協会の保証付きの借換えだ。中小企業庁は2026年3月2日、「経営改善サポート保証(経営改善・再生支援強化型)」の取扱期限を2027年3月31日まで延長した。再生計画などに基づいて事業を立て直すための借入を保証する制度で、計画は信用保証協会などが事務局を務める経営サポート会議か、中小企業活性化協議会などの支援を受けて作る。保証限度額は2億8,000万円と一般の保証とは別枠になる。保証期間は15年以内、据置期間は3年以内、保証料率は国の補助後で0.4%である。
店にとって大きいのは保証割合の扱いだ。原則は80%保証だが、100%保証の借入やコロナ禍のセーフティネット5号からの借換えは、保証付きの既存借入の範囲内に限り100%保証となる。今の借入がどの保証で組まれているかによって、金融機関が負うリスク、つまり借換えの通りやすさが変わりうる。
同じ発表で始まった「モニタリング強化型特別保証制度」は、認定経営革新等支援機関と連携し、月次で財務や資金繰りを金融機関と信用保証協会に報告すると誓約した事業者が対象になる。取扱期間は2029年3月31日までで、2027年3月31日までの申込分は保証料の2分の1相当を国が補助する。月次の数字を出せる店なら、こちらも候補に入る。
相談先は借入の状態で選ぶ、申立て後は協議会の対象外
相談先は、リスケや借入の一本化で足りるか、再生計画を作って保証付きの借換えに進むかで変わる。前者なら融資を受けた金融機関が窓口になる。後者では、経営サポート会議か中小企業活性化協議会の支援で再生計画を作り、その計画に基づく借入の保証を信用保証協会が判断する。どこから手を付けるか決めかねる段階なら、よろず支援拠点で資金繰りを含めて相談できる。
| 相談先 | 主な相談内容 | 条件・特徴 |
|---|---|---|
| 融資を受けた金融機関 | リスケ、自行内の借入の一本化 | 新規貸出には厳しい対応も聞かれる |
| 信用保証協会 | 経営サポート会議(事務局)、再生計画に基づく借換えの保証、モニタリング強化型特別保証 | 計画に基づく借入の保証の可否と、100%・80%どちらの保証になるかを判断する |
| 中小企業活性化協議会 | 再生計画や経営改善計画の策定支援、借入金・資金繰りの相談 | 全都道府県に設置。相談無料・事前予約制。申立て後は対象外 |
| よろず支援拠点 | 資金繰りを含む経営全般の相談 | 47都道府県に設置。何度でも無料 |
出典:東京商工リサーチ、中小企業庁、よろず支援拠点全国本部
中小企業活性化協議会は、2022年4月に中小企業再生支援協議会などを統合して発足した公的機関である。国が認定した専門家の支援で経営改善計画を作る場合は、専門家への費用の3分の2を補助する事業もある。民事再生や破産を申し立てた後は対象外になるため、相談は早いほど選択肢が残る。
資金が足りない月を先に割り出せば、相談の順番が決まる
どの窓口でも、話し合いの出発点は自店の借入と資金繰りを数字で示せるかどうかになる。準備は次の4段階に分けると進めやすい。
- 借入を書き出す金融機関ごとに、残高・毎月の返済額・金利・最終期限を並べる。
- 保証の種類を分ける信用保証協会の保証付きか、保証のない融資かを分け、保証付きなら100%か80%かも控える。
- 返済が増える月を押さえる据置期間の終わりと、元金返済が始まる月を日付で書く。
- 資金繰り表に重ねる今後12か月の入出金に返済額を重ね、資金が足りなくなる月を洗い出す。
この表に直近2〜3期の決算書と月次の損益を添え、客数・客単価やFL比率(食材費と人件費の売上比)の推移を示せば、どこで利益が削られているかを説明しやすい。不足する月までに時間があるほど、リスケや借入の一本化で足りるか、再生計画を作って保証付きの借換えに進むかを見極める余地が残る。保証の可否は信用保証協会と金融機関が判断し、税務や法的整理は税理士や弁護士への確認が要る。
注目する数字は3つある。経営改善サポート保証の取扱期限である2027年3月31日、9月の利上げが自店の借入金利に及ぶ時期、そして東京商工リサーチが毎月公表するゼロゼロ融資利用後の倒産件数で飲食店が高い水準のままかどうかだ。返済額を少し下げれば資金繰りが回るなら、まず金融機関にリスケや借入の一本化を相談する。それでは足りず借換えが要るなら、2027年3月末の期限から逆算して経営サポート会議か活性化協議会で再生計画づくりに入り、計画に基づく保証付きの借換えを目指す。月次の数字を報告できる店は、2029年3月末まで取り扱うモニタリング強化型特別保証も比べる候補になる。
出典
- 東京商工リサーチ TSRデータインサイト「年度上半期の「ゼロゼロ融資」利用後の倒産 149件」(2026年10月8日)
- 東京商工リサーチ TSRデータインサイト「2026年上半期「ゼロゼロ融資」利用後の倒産157件」(2026年7月8日)
- 中小企業庁「中小企業者の経営状況の変化の予兆を早期に把握することを後押しする新たな保証制度等の取扱を行います」(2026年3月2日)
- 中小企業庁「中小企業活性化協議会(収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援)」
- 中小企業庁「中小企業活性化協議会(産業復興相談センター事業)実施基本要領等を公表しました」(2022年4月1日)
- よろず支援拠点全国本部(中小企業基盤整備機構)
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