ビール大手4社にカルテルの疑い 店の仕入れは酒税改正で先に動く
公取委がビール大手4社にカルテルの疑いで強制調査に入ったと報じられた。10月8日時点では疑いの段階で、違反は認定されていない。店の仕入れ単価を先に動かすのは10月の酒税改正で、当面は請求書と改定の案内を残しておくことが判断の材料になる。

公正取引委員会が10月7日、アサヒビール、キリンビール、サントリー、サッポロビールの4社に、出荷価格をめぐるカルテルの疑いで強制調査に入ったと報じられた。毎日新聞によると、2018年にはビール酒造組合の加盟5社の出荷量のうち、この4社が約99%を占めていた。店で出す大手銘柄の多くがこの4社の商品だ。ただし2026年10月8日時点では疑いの段階で、公取委は違反を認定していない。店の仕入れ単価を目先で動かすのは、むしろ10月1日の酒税改正である。ビールは350mlあたり9.1円の減税、発泡酒と第三のビールは7.26円の増税となった。調査の結論を待つ間は、10月の請求書と価格改定の案内を残しておくことが、後で自店への影響を判断する材料になる。
疑われているのは卸向け出荷価格の調整、違反は未認定
時事ドットコム(時事通信)によると、独占禁止法違反の疑いだ。容疑は「不当な取引制限」で、対象はビール、発泡酒、第三のビールとされる。疑われているのは、卸売業者に売る際の出荷価格を数年にわたり調整したことだ。同社の報道では、各社の営業課長らが値上げの時期や幅の情報を共有していた疑いがある。
会合の場も報じられている。TBS NEWS DIG(10月7日)によると、各社の営業課長らは「一木会」にあわせて非公式に集まっていたとされる。一木会は、ビール酒造組合で毎月第1木曜日に開かれていた会合だ。そこで値上げ幅の目標を定めていた疑いがあるという。いずれも関係者の話に基づく報道で、事実として認定されたものではない。
調査の手法も通常とは違う。毎日新聞によると、使われたのは犯則調査権だ。行政処分を前提にふだん行う調査と違い、裁判所の令状をもとに強制的な捜索や差し押さえに踏み込める。価格カルテルの疑いでビール大手各社に強制調査をするのは初めてという。時事通信は、公取委が検察への刑事告発を視野に入れていると伝えている。
産経新聞によると、4社は調査を受けた事実を認めた。そのうえで、全面的に協力するとコメントしている。一方で、カルテルの認識を否定する発言もある。TBS NEWS DIG(10月8日)が伝えた。アサヒグループホールディングスの社長は、カルテルの認識を問われ「私どもは全くございません」と答えた。公取委の調査に委ねたいとも述べている。
時事通信によると、公取委の岩成博夫事務総長は、原材料費の上昇を受けた値上げ自体は問題視しないと述べた。問われているのは値上げの有無ではなく、各社が価格を独立して決めていたかどうかだ。過去の値上げそのものが違法だったと受け止めるのは早い。
目先の仕入れ単価を動かすのは10月の酒税改正
調査の行方とは別に、10月1日からビール系飲料の酒税が変わった。財務省「酒税に関する資料」によると、税率は一本化された。2026年10月から1klあたり155,000円だ。ビールは税額が下がり、発泡酒と第三のビールは上がる。
- ビール
- 9.1円の減税
- 発泡酒・第三のビール
- 7.26円の増税
- 改正後のビール系飲料の税額
- 54.25円
税額の差で、メーカーの値下げ額ではない
税額の差で、メーカーの値上げ額ではない
1klあたり155,000円を350mlに換算
出典:秋田魁新報 2026年5月29日、財務省「酒税に関する資料」(54.25円)
秋田魁新報(10月1日)によると、大手メーカーは税率の変更に合わせて出荷価格を改定した。アサヒビールなどは10月からビールの出荷価格を引き下げると公表している。市販品の例では、サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」350ml缶の店頭想定価格が279円から270円になった。
秋田魁新報(5月29日)によると、アサヒビールは5月29日の発表で、発泡酒や第三のビールは値上げするとした。ただし改定の具体的な金額は公表していない。樽や瓶など業務用の改定幅は、卸からの案内と10月の請求書で自店の数字を確かめることになる。生ビールを中心に扱う店は単価が下がる方向、発泡酒系を多く扱う店は上がる方向に備えることになる。
調査の結論が出るまでは、取引を変えるより記録を残す
飲食店は通常、メーカーから直接ではなく、卸売業者や酒販店を通じてビールを仕入れる。疑われているのはメーカーから卸への出荷価格だが、毎日新聞は、この生産者価格が飲食店で提供されるビール類の価格にも影響すると伝えている。
一方で、違反の有無も期間も決まっていない。時事通信によると、カルテルが認定された場合の課徴金は高額になる可能性があるが、告発や課徴金は公取委が今後判断することだ。今回の報道だけを理由に、取引先の変更や返金の要求を急ぐ根拠は乏しい。取引や契約に関する具体的な対応は、弁護士などの専門家に相談したうえで決めたい。
- 単価の推移樽・瓶・缶ごとに、請求書から仕入れ単価と改定日を一覧にする
- 改定の案内卸やメーカーから届いた価格改定の通知書・メールを日付順に保存する
- 10月の請求酒税改正後のビールと発泡酒系の単価が、案内どおりに変わったかを照らし合わせる
- 契約の条件取扱契約や協賛・リベートの条件、価格改定時の取り決めを読み直す
単価と改定日の一覧は、手元の請求書だけで作れる。調査の結論が出たとき、どの時期の改定が対象になったかと自店の仕入れ記録を突き合わせられれば、取引先と話す際の材料になる。
メニュー価格を考える出発点は、10月の請求書で生ビールの仕入れ単価が実際に下がったかどうかだ。下がっていれば、売価を据え置いて粗利を確保するか、値下げや限定メニューで集客に回すかを選べる。発泡酒系が上がった店は、ビールへの切り替えも比較の対象になる。そのうえで、公取委が刑事告発に踏み切るかどうかと、各社の続報を、仕入れ条件を見直す時期の目安にしたい。
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